18.灯篭流しは簡単じゃなかった

 閖上で灯篭流しをやろう。絶対にやるべき。といって出来たプロジェクト。花火は大変なことだけど、灯篭流しは大丈夫でしょう、と思っていましたが、簡単なことではありませんでした。
まず、灯篭流しをどこでやるか?これが大問題でした。
震災前に例年、夏祭りの花火の前にやっていた灯篭流しの場所は、閖上の港で、そして、そのもっと前は名取川河口でやっていた。

 閖上の港は護岸が津波被害を受け、又なによりガレキの山があって、とても近づける状況ではなかった。名取川は閖上大橋のふもとに、結構川岸が広く、かつて子ども会でシジミ取りなどもした場所があったのでそこが良いだろうって考えた。

 しかし、行ってみると、やはり津波被害で川岸はグチョグチョで、人が入るとズボズボになる。プロジェクトのメンバーが、ここに鉄板 か板か何かを敷き詰めれば大丈夫じゃねーか?と提案。早速、警察に提案してみるも全くダメでした。川の中に一般来場者を入れること自体がダメだと言われる。来場者は川岸から見るだけにして下さい。と。
遺族の皆さんに自身で灯篭流しをやってもらおうと考えていましたが。

 それなら、いっそ、名取川の対岸で流すのを、こちら側から見たらどうだろう。
メンバー数人でまずは実験してみることに。毎週やっていた実行委員会の会合の後、夜8時半か9時頃だったでしょうか、そのまま名取川まで行き、仙台市側 の名取川対岸で、実行委員長の櫻井さん部隊が灯篭流しをする。その様子を携帯電話で連絡をとりながら、名取市側の川岸から見てみる。全く見えない。微かに 灯りがあるかなー?ぐらい。

 ダメ。これじゃー見えない。

結局、閖上大橋より河口の閖上1丁目の川岸から降りたところ、ここしかない。
それより上流は既に警察にダメと言われたし、それより下流(河口)は、津波で堤防が破壊されてまだ修復されておらず立ち入り禁止区域となっている。

 かつて、物資を川で運んでいた時代には、そこは船着場であり港であったらしい。少し水がたまるようになっていて、灯篭流しをしてみ ると、下流に流れるどころか、たまってしまう。大問題。どうするか、大型扇風機か、あるいは大量の水をどうにかして流すか、あるいは棒か何かで手動で押し出すか。とにかく対策が必要と、頭を悩ませることに。
とにかく、ここしかないから、ここでやるしかない。

早速、提案書を作り、警察に申請すると、ようやく許可が出た。ただし、川の中に降りて灯篭を実際に流すのは遺族ではなく、スタッフ数名が代わりに行うこと。そして、川岸でこれを見る来場者は、1000人程度に限定すること。

 1000人かー、すごく少ない数だけど、仕方がない。他にやる場所がないのだから。
しかし、1000人近い人が亡くなっているのだから、一人に対して一人しか灯篭流しが見えないとは、少な過ぎる。

 その後、警察の人達と現場を検証したところ、川岸から落下の恐れがあるから柵を作るように言われ、更に、人数も1000人から500人に減らされた。
しかも、500人の来場者制限を厳格に守ることを約束させられ、それを守る手法も問われた。私達は警備員を配置し、カウンターをつけて人数をしっかりカウントすること、そして、来場者にはあらかじめ整理券を発行するという案を提出して、ようやく認められた。

 さて、来場者500人だって?ほとんどの人はこれじゃー見えないじゃない。どうするの?と、実行委員会で再び問題となる。
既に、閖上中学校のグランドを花火会場にしようとしていたので、その会場にライブで中継映像を大型スクリーンに流せないか?そんな案が浮上した。

 インターネットを使って生で映像を流そう、当初はそう考えたが、すぐに無理とわかる。なにしろ、NTTの光回線がない、電柱すら津 波で流されている状態でしたから。では、wifiとか、無線LANが使えるかといろいろ試すも、近くにアンテナがないからでしょうか、非常に不安定で使い物にならない。
困り果てていた時、某TV局にお勤めの実行委員メンバーが奥の手を提案した。
TV局が持っている電波を使えば実現可能だと。
それはTVの番組として、生中継をする、というものだった。
この企画は、私達が考えている以上に大変だったようで、彼は、局内で自分の首をかけて提案をし、この企画実行に向けて動いてくれた。

こうして、灯篭流しのライブ映像を大型モニターで見せられることとなった。

 最後に、県の土木事務所の関門があった。灯篭流しをするのに、水に溶ける素材であればそのままで良いという話を聞いていたが、全く違った。水に溶けるのであるなら、その成分が環境に影響しないという証明を出せという。

 何を言っているの?津波でどれだけの家財道具が海に流れたか。たかが紙の灯篭1000基ぐらい、関係ないじゃない。こんな状況だか ら見逃してよ、と思いましたが、お役所の決まりは変えられない。結局、灯篭流しをした後、灯篭は全て回収するということにして、回収するためにはどうする か、という対策案も作り提出した。

 それより大問題は、警察に言われたことの実現。来場者を入れる場所に危険防止のため柵を作るということだった。河川の堤防に柵を作るということは、堤防の強度を損ねる恐れがあるから、その柵の設計書を提出して、そして問題がないか検討するという。
全く大変なことになったが、なんとか、杭の深さ、強度を調べ、杭をうち、ロープを張った。夏の暑い中での杭打ち作業は、ボランティアで東京から来た、早稲田大学ボクシング部の体力ある若者達がやってくれた。

前日に、警察には現地確認をされ、十分な強度で問題がないことを確認し、無事合格となった。

19. 電気と水がない ということ

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