事業継続

まさかの東日本大震災に遭遇して予測できなかったこと。震災時の事業継続を考える

 平成23年3月11日、東日本大震災では、誰もが予想もできなかったような大津波が、弊社の本社のすぐ近くまで押し寄せました。幸い社屋は被害を 免れ、ISMS(ISO27001)取得時に策定した事業継続(BCP)計画により業務を中断することなく継続することができましたが、震災前には予測で きなかったような事態が多々あり、事業継続は困難を極めました。

予想できなかったこと

1.NTT局が水没するとは!

弊社の本社がある、宮城県名取市では、海岸から内陸に4キロ地点まで津波が来ました。港町、閖上(ゆりあげ)にあった、NTT局は1階だけしかなく、完全に水没してしまったようです。こんなこと誰が想像できたでしょう。
NTT光回線が使えず、ネットに接続できなくなりました。これが復旧したのは、5月12日。ファックス回線はアナログでしたが、こちらは復旧が5月31日でした。
不思議なことに、アナログ回線は発信はできるのに着信ができないという状況でした。途中の電柱を通っているメタル回線が水につかったので、どういう状況かわかりませんが。

 結果、本社は2か月間、閉鎖しました。回線が使えなければ仕事になりませんから。
一番問題になったのは、本社の電話がつながらないこと。しかも転送もできない。
ボイスワープを契約していたので、転送ができると思っていたら、転送はNTT局のシステムが行っていたそうで、その局が水没し、システムが完全にダメにな り、転送もできない。では、お引越しの際にアナウンスするように、自動アナウンスを流してくれないか?とNTTに頼んでみるも、自動アナウンスも局のシステムでしか行えないそうです。

 ホームページには、本社の電話は不通だから中部支社に電話をして下さい、とアナウンスしましたが、ホームページを見ない方は、うちの会社は完全にダメになった、と思っていた方もいらっしゃったようです。本社の電話がつながらないというのは致命的でした。

 ただし、商品サービスのサポート電話は、0120で始まるフリーダイヤルでしたが、こちらは、OCNのサービスであり、水没とは関係なく、フリーダイヤルの転送先を名古屋の中部支社にすることで、震災直後より利用できました。

2.停電が1週間も続くとは

事業継続のプランを考えた時には、1日間の停電までしか考慮していませんでした。
まさか、現代の時代に停電が1週間も続くとは考えていませんでした。

停電になると、セコムも稼働しません。それに気付いたのは、震災直後、多くの人が避難所に避難している中、盗難が多発しているといううわさを耳にした時。閉鎖中の本社にある、社内サーバなどの重要資産が心配に。結局、自宅待機していた社員に頼み、本社の重要サーバなどをとりあえず、社員の自宅に避難させてもらいました。

3.運送もストップ、ガソリンもない

前述のサーバ避難。本来なら社員の自宅ではなく、中部支社に輸送してもらうところです。ところが、宅配便など全ての輸送が止まっていました。東北自動車 道が閉鎖されていたからです。又、社員に本社までサーバを引き取ってもらおうにも、ガソリン不足で動けないという。結果、タクシーにより輸送しました。

4.社員が会社に出社できない、仕事ができない

交通手段が全てストップ、おまけにガソリンもない。というわけで、回線が不通でなくても、しばらくは社員が会社に出社すら困難な状態でした。
電気が復旧してから、仙台市内など自宅で仕事をしてもらう社員であっても、昼間は、家族のため、食糧確保とガソリン確保のため、ほぼ1日を費やし、何もできない状況に。
避難所にいれば、炊き出しなどで食べ物がもらえるが、避難所もスペースに限りがあるため全員が入れるわけではない。自宅に避難している人は、かなり長い間、スーパーなどの店も閉鎖していたため、食糧の確保が困難な状況でした。仕事より家族を食わせること、生きることが優先され、仕事どころではなかったということです。

こんな事態になることを考えた場合、サポートを必要とする弊社のような業務は、十分離れた地域に、分散が必要です。幸いにも、弊社は十分離れた名古屋に中部支社を持っていたために、サポート業務も継続することができました。

★震災前、BCP(事業継続計画)では、顧客に提供しているサーバがダウンした場合を考えて、サーバを二か所(遠隔地)に分散することなど行っていましたが、サポート人員の分散までは考えておりませんでした。

震災後に見直したこと

1.技術系社員を中部支社にもおくことに

震災前、中部支社には代表と経理担当者しかいませんでした。全ての技術系社員は本社勤務でした。震災後、本社では業務ができなくなり、名古屋に社員を移 動させましたが、今回は代表が震災当日宮城にいましたが、たまたま直前に宮城を脱出していたため、直後のサポート業務を行うことができました。今後、どんなタイミングで、どこで震災が起きても良いように、中部支社にも技術社員を滞在させることにしました。

というわけで、本社から名古屋に来ていた社員2名を残し、更に、新規に技術系社員を中部支社でも雇用し、育てていく計画です。

2.社内サーバの分散二重化

お客様に提供しているサーバは分散化していても、社内サーバはハードを二重化していても場所は本社にのみありました。たまたま津波を免れたから良いものの、津波をかぶっていたら、完全に最新データを失うところでした。又、一時的にも情報にアクセスできない状況となりました。少し古い世代の情報を中部支社にもっていて、更に最新情報は紙で持っていたので問題ありませんでしたが。社内サーバの分散二重化も今後の検討課題です。

最後に

弊社は、本社が宮城県名取市にありながら、1日も休むことなく、震災直後の3月14日(月)から平常通り、業務を継続できました。災害時に活躍したメール配信システムが動き続いていただけでなく、フリーダイヤルのサポート業務も継続しました。

被災地、宮城県名取市のホームページの運用を任されていますが、ホームページの更新も市役所職員の依頼を受け、名古屋から、やはり直後の14日から更新 代行を行い、災害時に対応した新サイトを立ち上げ、又、サーバを一度もダウンさせず、運用し続けることができました。

又、社員達はすばやく、宮城から名古屋に移動し業務を継続できましたが、この移動には、多くの方にお世話になりました。

移動に協力頂いた仙台のタクシー会社、永楽交通様、それから、名古屋へ移動する社員の住居を低価格で提供頂いた、中部支社の大家さん、山一商事様には、感謝申し上げます。

又、一時的な生活に必要な中古家電や食器、家具などを提供頂いた、私佐宗の知人関係者の皆様、感謝申し上げます。

平成23年11月吉日
株式会社アットシステム 
代表取締役 佐宗美智代

株式会社アットシステム

本社

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